はじめてのxxx。
**作品紹介ページ**
ジャンル:恋愛
作:森カラ
*あらすじ*
ひとつ。日常の些細な変化は、俺には必要ない。
ひとつ。仮面を作り変えて人に接することが、環境に一番優しい。
ひとつ。俺の足は自分のためにしか動かない。
これが俺の日常で、全てだった。
けれど、”放課後の幽霊”と言葉を交わしてから、世界は反転し、喪失していた 現実感が呼吸を始める 。
だが俺が初めて仮面を壊し、現実と向き合おうとした途端、ある事件に巻き込ま れて――
*はじめて*
・はじめての本当の恋
・はじめての失恋
・はじめて他人のことを真剣に考える自分との出会い
・はじめて壊れる他者との間にある壁
*作者より作品についてひとこと*
このお話の中での主人公は、自分に降りかかる現実にとても敏感で、
そして困難 や環境の変化からすぐ に逃げてしまうタイプの人間です。
そんな主人公が畳み掛けてくる現実の数々に、どんな選択を取り、
どんな結末を 選ぶのかということを テーマにして書いてみました。
*作者HP&ブログ*
ブログ ABIBLO
*主催者によるレビュー(批評あり)*
緻密な文章。
文字を追うだけでぞくぞくっとさせる空気感は「森カラ」調、で
いつもながら文章力がすごいと思います。
ただ、今回は「恋愛感情」がからんでいるせいなのか、主役の男子高校生の語りによる進行が、
序盤で、いまひとつなじんでいない感じがしました。
文章が素晴らしいせいか、人物の類型・典型感が逆に際立ってしまった気がします。
具体的に例をあげれば、藍原について「男の子が好きになってあたりまえな女の子」な描写だったところ、などです。
森カラさんほどの文章だったら、もっと人物は深いほうが(というか裏があるほうが)、読者の心に切り込んでくるだろうと思います。
さらに、重要人物なのに芹沢の登場が遅い上に、主人公とのかかわりが薄い。
もっと早い段階で登場させつつ、もう少し主人公と近しいほうが、物語とリンクさせた「メロス」が際立つでしょう。
そのタイトルの「メロス」は、最後の最後で生きてくるのですが、
その使い方とテーマはいいと思います。
主人公が感じた「はじめて」も共感できました。
ただ、もっと序盤からそこに向かってストーリー展開したほうが
(つまり芹沢の登場を早くするということですが)、
読者をさらに引き込ませたのではないかと思いました。